いびき・睡眠時無呼吸症候群について
睡眠時無呼吸症候群とは何ですか?
睡眠時無呼吸症候群とは、その名の通り、睡眠中に呼吸が一時的に停止する状態です。
ご家族やパートナーから「いびきをしている」「呼吸が止まる」と指摘されることがきっかけで受診される方が多いです。
自覚症状としては、日中の眠気、頭痛や、寝ても疲労感が回復しづらい、などです。窒息感とともに目がさめてしまうこともあります。
有病率は30代~40代の若年層でも、男性の約10%・女性の約5%程度とも言われており、年齢を重ねていくと有病率は高くなっていきます。
睡眠時無呼吸症候群は自覚しづらいですが、珍しくない病気です。
また、睡眠時無呼吸症候群は、睡眠の質の悪化の他に、高血圧などの生活習慣病や、心疾患、脳血管障害のリスクになると言われています。
睡眠時無呼吸症候群を放置することは、将来の健康にとってリスクにもなりえます。
特に、男性・加齢・肥満・扁桃肥大・鼻閉・・・などの要素があれば、睡眠時無呼吸症候群になりやすいと言われています
いびき・無呼吸を指摘された方、”睡眠の質”でお悩みの方は、睡眠時無呼吸症候群について、診察を受けてみてはいかがでしょうか?
当院でも検査・治療が可能です。
このページでは、睡眠時無呼吸症候群について説明していきます
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の主な原因
睡眠時無呼吸症候群には分類があり、大きく分けると閉塞性と中枢性の2種類があります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群
「閉塞性」とついているように、呼吸時に咽頭(のど)が虚脱し、せまくなることで生じます。のどが完全に虚脱してふさがると無呼吸になります。
咽頭腔・のどの広さには個人差があり、のどが狭い方は睡眠時無呼吸症候群になりやすくなります。
のどに関連するものを含めて、以下が閉塞性睡眠時無呼吸症候群のリスクになります
・あごが狭い
・のど・首周りの脂肪が多い・首が太い(→肥満)
・扁桃肥大
・鼻詰まり
その他、高齢・男性であることなどもリスク因子に含まれます。
ですが、いくらのどが狭くても、覚醒時はのどがせまくても呼吸が止まったりはしません。
睡眠中には、また別の要素が加わります。
睡眠中は、のどが狭くならないように(=虚脱しないように)、気道を開くように働く筋肉の活動性がさがります。
また、筋肉の弛緩により舌の根元がのどに向かって落ちてきて、よりのどはせまくなります。
もともとのどが狭い方で、睡眠中にのど・気道を開く筋肉の活動が落ちると、のどは虚脱し無呼吸状態になる、というのが閉塞性睡眠時無呼吸症候群です。
中枢性睡眠時無呼吸症候群
中枢性睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中の脳呼吸中枢の異常で発生します。
閉塞性は呼吸をしようとしてものどの閉塞により物理的に呼吸がとまる状態であるのに対して、中枢性は睡眠中に呼吸をする司令が止まって、呼吸がとまる状態です。
閉塞性に比較して頻度はすくなく、50歳前後の男性の1%,女性の0.1%程度と言われています。
心不全・脳卒中患者さんに起こりやすいと言われています。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の生活への影響
睡眠時無呼吸症候群は、自覚的には気づきにく病気ですが、生活の質や、生活習慣病のコントロールにおいて大きな影響を与えます。
睡眠不足と日中の眠気
睡眠時無呼吸によって、睡眠中の窒息感とともに目覚めることがあり、睡眠時間は細切れになることがあります。
細切れに分断されて、睡眠が浅くなることで、日々の睡眠の質が低下します。
これにより生じるのが日中の眠気です。
日中の眠気は、お仕事の生産性にも影響しますし、トラック等も含めドライバーさんにとっては事故の原因にもなり得ます。
睡眠の質、生活の質、仕事の質を下げてしまうのが睡眠時無呼吸症候群です。
適切な治療により、睡眠の質を改善することができます。
診断と治療
適切な治療を始める前に、適切な診断が必要になります。
睡眠中の状態を検査する方法、治療方法について説明します。
診断方法と検査
正確な診断・治療のためには、「呼吸が止まっていた」という申告だけでは不十分で、睡眠中の無呼吸を客観的な指標で評価する必要があります。
(幼小児など例外がありますが。)
睡眠状態を検査する方法は大きく分けて2つあります
精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査=PSG)
睡眠中の脳や体の状態をモニターする検査です。
脳波・眼球の動き・心電図・気流・呼吸努力・酸素飽和度・顎筋電図など、多くの要素をモニターし、睡眠時無呼吸とその原因となる所見を記録します。
この検査により、睡眠中の無呼吸指数(AHI)が高いと睡眠時無呼吸症候群の診断となります。
また、無呼吸以外の体や脳波の状態から、閉塞性・中枢性の鑑別も可能です。
欠点はモニターが多い=体に装着するものが多いので、検査が煩雑であることです。
そのため、多くの場合は最初に簡易検査を行い、詳しい評価が必要になった場合に行われます。
多くの医療機関では、入院して検査技師や看護師の管理のもとで行われますが、当院では在宅検査の扱いもございます。
多くの項目をモニターする検査であり、入院をして管理を受けた方が在宅よりも検査の質は高くなります。
ですが、入院にかかる時間的・費用的コストは在宅検査が勝る部分があります。
検査を受ける方のニーズに合わせて検査を提案します。
簡易検査
上記の精密検査から、モニターする内容を減らしたものが簡易検査です。
簡単に行うことができるので、スクリーニングとして、最初に行う検査がこちらです。
閉塞性と中枢性の鑑別が困難になる場合があったり、無呼吸の頻度を過小評価することもあります。
最大のメリットは、モニターが少ないので、在宅でも簡単に検査可能な点です。
こちらの検査でAHIが高い場合においても、睡眠時無呼吸症候群の診断が可能です。
治療法とその効果
睡眠時無呼吸の治療は睡眠の質の改善と、睡眠時無呼吸症候群による持病の悪化リスクを低減することが目的になります。
適切な治療により無呼吸が改善すると、睡眠の質が向上し、日中の眠気、頭痛、疲労感の改善があります。
また、睡眠時無呼吸症候群は、高血圧、糖尿病、心不全のリスクになります。
睡眠時無呼吸の治療により、高血圧や心不全は改善する可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群を放置することは、基礎疾患の悪化や、将来の心血管疾患(狭心症や心筋梗塞など)、脳血管障害(脳梗塞など)のリスクを上げることになります
治療を行うことで、基礎疾患のコントロールをするとともに、将来の健康リスクを下げることにつながります。
睡眠時無呼吸症候群の治療については大きく分けて、CPAP・口腔内装具・手術治療の3つがあります
CPAP(持続陽圧呼吸療法)
CPAPという機械での治療。鼻から空気を送り込み、気道の陽圧を保ち虚脱を防ぐ。
空気を送り込んで気道をふくらませ、気道を確保して無呼吸を起こしにくくする、というイメージです。
簡易検査でAHI40以上、精密検査でAHI20以上の場合にCPAPが保険適応になります。
身体への大きな悪影響は少なく、無呼吸の改善が得られることが最大のメリットです。
CPAP装着下の睡眠に慣れると、睡眠の質の改善を実感できる方が多くいらっしゃいます。
デメリットになる部分は、対症療法であるため中止するとすぐに無呼吸が再発することと、装用に伴う不快感です。
鼻に器具を装着する関係で、慣れるまでは不快感があり、人によっては断念することもあります。
鼻づまりが強い方は特にCPAPの不快感を感じやすいので、鼻づまりがある場合はその治療も並行して行います。
CPAPの管理は内科でも行われますが、耳鼻咽喉科で治療を受ける利点は、鼻づまりなどの管理にあると思います。
当院でもCPAP治療の相談・導入可能です。いびき・無呼吸の治療希望の方は受診の際にお知らせ下さい。
なお、CPAPは取扱業者からのリース・貸出となり、原則1~2ヶ月毎の通院が必要です。
通院時には、機械に記録された睡眠の記録を確認し、問題があれば対応します。
その管理と、リース費用のため通院が必要となります。
OA(口腔内装具・マウスピース)
マウスピースを装着することで、舌根の沈下を防ぐ。
AHIが高い場合には不十分なことがあります。
対応可能な歯科で装具を作成して管理してもらう必要があります。
外科的治療(手術)
扁桃摘出と、口蓋垂を切除したり、咽頭を広くするような手術を行うことがあります。
治療選択の目安
睡眠時無呼吸の検査でわかる、無呼吸の指数(AHI)に応じて、治療が異なります。
AHIとは、1時間あたりの呼吸が止まったり浅くなったイベントの回数です。
AHIの数字に応じて、おおよその治療方針が決まります
- AHIが5より少ない
→睡眠時無呼吸は否定的のため治療不要
- AHIが 5~20
→自覚症状があればOA治療を試す
- AHIが 20以上
→CPAP療法
さて、上記の中に手術治療は含まれていません。
睡眠時無呼吸に対する手術は主に耳鼻咽喉科で行われますが、手術を行った方が良いか、適応の判断は簡単ではありません。
扁桃肥大が強く、咽頭腔が物理的に著しく狭い場合に適応となります。
ですが、扁桃肥大がある方が手術をすると、全員が治るかというとそうではありません。
一方で、咽頭違和感、嚥下(飲み込み)への影響、出血、味覚異常などの術後の合併症リスクが少なからずあります。
また、術後の瘢痕拘縮によって、かえってのどが狭くなるリスクもあります。
手術によって得られるメリットとリスクを天秤にかけると、多くの場合でリスクが勝る状態であり、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の標準治療において、第一選択はやはりCPAPとなります。
なお、「いびきに対するレーザー治療」については、推奨されていません。(睡眠時無呼吸症候群ガイドライン)
有効性が低い割にレーザー照射後の瘢痕拘縮による咽頭狭窄が問題となっており、ガイドラインでは推奨されていません。
よって標準的治療において、レーザーの適応はかなり限られます。
いびきに対する手術適応の判断は簡単ではありません。
レーザーも含め、いびきに対して手術を検討する際には、耳鼻咽喉科専門医への受診をおすすめします。
日常生活での気をつけるべきポイント
まずは、日常生活において、日中の眠気や、朝の疲労感など、無呼吸にともなう症状はないか、どうでしょうか。
また、ご家族やパートナーからいびきや無呼吸の指摘があり、症状があれば検査を考えてみましょう。
特に仕事中や運転中に眠くなり、ハッとした経験がある方、高血圧や糖尿病などの持病がお持ちの方は、積極的に考えてみてほしいと思います。
当院では、在宅での検査が可能ですのでお気軽にご相談下さい。