鼻づまりで眠れない…慢性的な鼻詰まりの原因と治療法
日常的に「鼻がつまって息がしにくい」「夜、鼻が詰まって寝つきが悪い」といった症状に悩まされていませんか?慢性的な鼻づまりは、単なる不快感にとどまらず、睡眠の質の低下や生活の質(QOL)を大きく損なうこともあります。この記事では、耳鼻咽喉科専門医の立場から、鼻づまりの原因とその解消法・治療法について、解説します。
鼻づまりとは?よくある症状とその背景
鼻づまりの定義と仕組み
鼻づまり(鼻閉)は、鼻の通気性が低下した状態を指します。鼻粘膜が炎症などにより腫れると、空気の通り道が狭くなり、呼吸がしづらくなります。これは一時的なこともあれば、数週間以上続く「慢性鼻閉」となることもあります。
鼻づまりによる睡眠への影響
夜、就寝時の寝ている姿勢では、鼻の中の血のめぐりがよくなって、鼻の粘膜がむくむため鼻が詰まりやすくなります。これは横になると重力の影響で起こる自然な現象ですが、鼻づまりが強い人は特に感じやすくなります。
鼻が詰まって口呼吸になると、睡眠中にいびきをかいたり、無呼吸状態が生じたりすることがあります。こうした睡眠障害は、日中の集中力低下や疲労感の原因にもなります。一方で、鼻づまりを改善させると睡眠の質が向上することもわかっています。
睡眠時無呼吸の症状やいびきが気になる方は、当院で無呼吸の検査も可能です。ぜひご相談ください。
慢性的な鼻づまりの主な原因
アレルギー性鼻炎
慢性的な鼻づまりの代表的な原因です。日本アレルギー学会によると、国民の40%以上が何らかのアレルギー性鼻炎を有すると報告されています。ダニやハウスダストに反応する「通年性アレルギー性鼻炎」は、1年を通して症状が持続します。
ダニやハウスダストは、布団周りに存在するため、就寝時や起床時などに鼻閉が悪化しやすくなります。
飲み薬や点鼻薬、舌下免疫療法などお薬での治療が有効です。
アレルゲンの種類と回避法
・ハウスダストやカビ(通年性)
・花粉(季節性)
・ペットの毛など
ハウスダスト、カビ、ペットの毛などに対しては、生活環境のお掃除が重要です。
特に、こまめにシーツ交換、布団を干したり掃除機がけを心がけましょう。
掃除をどんなに気を付けても症状が出ることはあるので、その場合はお薬での治療も考えましょう。
花粉に対しては、外出時にマスクを着用する、外出前に薬を飲んでおくと症状の軽減が期待できます。
アレルゲンを避ける生活環境の工夫は、治療と並行して重要です。
慢性副鼻腔炎
副鼻腔(鼻の奥の空洞)に炎症が慢性化し、鼻づまり・膿性鼻汁・嗅覚障害・後鼻漏(のどに鼻水が流れ込む)などが続きます。ガイドラインでは、症状が12週以上続く場合を「慢性副鼻腔炎」と定義しています。CTや鼻内視鏡による評価が診断に有効です。
慢性的な鼻づまりに加えて嗅覚障害や後鼻漏が多い場合には、慢性副鼻腔炎の可能性があります。
抗菌薬での治療が有効なことがあり、耳鼻咽喉科でしっかりと治療しましょう。
鼻中隔弯曲症や鼻茸(ポリープ)など構造的な病気
鼻の中央にある仕切り(鼻中隔)が曲がっていたり、ポリープ(良性腫瘍)ができていたりすると、片側あるいは両側の鼻づまりが持続します。こうした構造的異常では、薬物治療では不十分なことも多く、手術治療が検討されます。
自分でできる鼻づまり解消法
おすすめの市販薬やセルフケアでの一時的対処
ドラッグストアなどで購入できる、鼻づまりに有効な薬をいくつかご紹介します。
①抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)
例えば、アレジオン、アレグラやクラリチンなどです。
アレグラとクラリチンは副作用として眠気がでる可能性が低く、車を運転する方にお勧めです。
アレジオン、アレグラ、クラリチンは比較的副作用が少なく、使いやすいお薬です。
鼻炎症状に特化した総合感冒薬にも抗ヒスタミン薬は含まれていますが、眠気や口の乾きなどの副作用が出やすいものがありますので注意してください。
②漢方薬
葛根湯加川芎辛夷という名前の漢方薬は鼻詰まりに有効です。
上の抗アレルギー薬と併用してもよいかもしれません。
長期間の服用はしないようにしましょう。
③点鼻薬
ナファゾリンなどの血管収縮薬を配合した、ナザールなどの点鼻薬は、鼻づまりに対して即効性があります。
一時的な改善が得られますが、長期使用で鼻づまりが悪化するリスクがあります。次に注意点を説明します。
花粉症用の、「フルナーゼ」や「ナザールαAR0.1%〈季節性アレルギー専用〉」などはステロイドが主成分で、薬剤性鼻炎を引き起こしません。
アレルギーの鼻詰まりに非常に有効ですが、血管収縮薬とは違って即効性はなく、数日間使い続ける必要があります。
状況や症状に合わせて、適切に薬剤を選択しましょう。
また、お薬の説明書の注意点、用法用量を守りながら使用しましょう。
自分の状況にあった薬の判断が難しい場合は、耳鼻科への受診も考えましょう。
そのほか、自宅でできるケアとして、鼻うがいがおすすめです。粘膜の洗浄や加湿に役立ち、自然な解消法として推奨できます。
また、水で濡らしたタオルなどをレンジで温め、鼻の上にのせて蒸しタオルのようにすると一時的に鼻づまりがやわらぎます。
やけどに注意して行ってみてください。
市販の点鼻薬使用の注意点
ドラッグストアで購入できる点鼻薬(血管収縮薬)は、短期間の使用であれば即効性があります。ただし、1週間以上の連続使用は薬剤性鼻炎を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
点鼻薬を使って一時的に鼻づまりが解除されても、一定時間経過するとリバウンドが生じて、鼻が詰まるようになります。
また鼻がつまるようになるため点鼻薬を使用する・・・という悪循環に陥るケースは少なくありません。
市販の点鼻薬の説明書にも、長期間の連続使用は控えるように記載があります。
あなたの使用している点鼻薬は大丈夫でしょうか?説明書を確認しましょう。
もし、市販の点鼻薬による薬剤性鼻炎かも、と思った場合には耳鼻咽喉科への受診をお勧めします
日常生活での予防と改善
・加湿器で室内湿度を40~60%に保つ
・寝具やカーテンのこまめな洗濯
・空気清浄機の活用
・禁煙や規則正しい生活
生活環境の整備は、アレルゲン暴露の低減や粘膜の健康維持に効果的です。
耳鼻咽喉科で行う鼻づまりの治療
根本原因に応じた治療の流れ
まずは原因の特定が重要です。鼻の中の視診、アレルギー検査(血液検査)、鼻内視鏡などを行い、適切な診断に基づいた治療を進めます。
・アレルギー性鼻炎 → 抗ヒスタミン薬、ステロイド点鼻薬、抗ロイコトリエン薬などの薬剤の併用、舌下免疫療法
飲み薬で十分な改善がなければ、ステロイド点鼻薬を併用することで上乗せでの治療効果があります。
また、特に鼻詰まりが強いケースでは、血管収縮薬を配合した抗アレルギー薬を使用すると、鼻づまりに高い効果が期待できます。
適切な薬剤選択で、アレルギー性鼻炎の鼻づまりは治療可能です。
・副鼻腔炎 → 抗菌薬(細菌性が疑われる場合)、去痰薬、ステロイド点鼻など
慢性副鼻腔炎の場合は、最長で3ヶ月程度、長い時間をかけて飲み薬で治療を継続して効果をみていきます。
市販薬で慢性副鼻腔炎は治癒しないため、副鼻腔炎かな?と思った場合は受診をご検討ください。
・鼻中隔湾曲症など、鼻の形態による鼻づまり→ 手術など
外科的治療が検討されるケース
お薬での治療を十分な期間にわたって行っても、改善しない鼻づまりには手術が行われます。
当院では、薬での治療を行いながら、必要に応じて手術の必要性を提案し、ご希望の際は手術が可能な病院をご紹介しています。
・鼻中隔湾曲症に対しては、ゆがんだ鼻中隔軟骨を矯正し、鼻の通りを改善させる鼻中隔矯正術が行われます。
・薬物治療で改善しない慢性副鼻腔炎には、内視鏡下に副鼻腔炎の手術が行われます
また、アレルギー性鼻炎に対しても、薬物治療で十分な改善がない場合も手術が行われます。
「眠れないほどの鼻づまり」は医師に相談を
こんな症状があれば耳鼻咽喉科へ
・鼻づまりや嗅覚障害が数週間以上続く
・膿のような鼻水や頭の重さがある
・口呼吸が習慣化している
・いびきや睡眠時無呼吸が疑われる
これらの症状がある場合は、耳鼻咽喉科での診察を受けることをおすすめします。
早めの受診が生活の質を守る
鼻づまりは「よくある症状」ですが、早期の診断と適切な治療によって、睡眠の質も生活の質も大きく改善します。
最後に
慢性的な鼻づまりは、軽視されがちですが、体全体の不調の引き金となることもあります。千歳市周辺にお住まいで、「なんとなく鼻が詰まってつらい」と感じている方は、お気軽に当院までご相談ください。耳鼻咽喉科専門医が丁寧に診察し、最適な治療をご提案いたします。